0.イントロダクション

　「眼鏡っ娘（黄色異人的にはそういう表記）」！ 世の中に萌えはいろいろありますが、その中でも妹と並び代表格の萌えファクター、それが眼鏡っ娘であります。古くは少女漫画にそのルーツを持つ（*1）眼鏡っ娘。 現在ではエロゲー、ギャルゲーのヒロイン中一人は眼鏡っ娘であるとか(*2)、果てはヒロイン全員が眼鏡っ娘であるようなエロゲーまで発売され、眼鏡オンリーの即売会は3系統、少年誌でも着実に増加傾向にあると、眼鏡っ娘の勢力は地味ながら着実に増しています。
　そこでふとある疑問が湧きます。「眼鏡っ娘」が持つ意味とは何なのか、眼鏡っ娘の持つ属性とは何なのか。 確かに「眼鏡っ娘」の代表的なイメージはある。だが、それは本当に正しいのだろうか？という疑問です。 以前にも、筆者が持っているイメージを元に「眼鏡っ娘」の属性というものについて語ったことはあるのですが、それを統計的に評価したことはありませんでした。 今回は、絨毯爆撃的に眼鏡っ娘をサンプリングし、その傾向を評価しようと考えたわけです。
　結局時間の関係で200人強程度のサンプリングとなりましたが、だいたいの傾向は掴めるかと思います。

1.ここでいう「眼鏡っ娘」とは？

　「眼鏡っ娘」と書いて「めがねっこ」と読む。その存在の定義について今更論じる必要があるかといえば、ある一点を除いてはないんですが、とりあえず定義しておきます。 広くは「眼鏡をかけた娘（女性）」であり、仮想世界にまで狭めるならば「眼鏡をかけた女の子（女性）キャラ」となります。 ここで重要なのは、どこまでを「っ娘」とするかという問題です。 そのキャラが「っ娘」であるかどうかは多分に年齢的な問題が出てくると思われますが、ここでは敢えて限定せず、「眼鏡をかけた女性キャラ」と定義します。 エロゲ眼鏡っ娘リストによれば、人間女性で確認できる最高齢が35歳というのもあり、これを「っ娘」と呼ぶのはかなり難しいと考えますが、統計的に線引きができないこともあり含めています。
　ちなみに、現実にはどの程度の眼鏡っ娘がいるか？ これについては、文部科学省の資料が示すところによると、高校二年生女子の37%、高校三年生女子の40%が視力0.3以下（矯正必要な視力とされている）だそうで(*3)、コンタクトが約半分だったとしても、10人に2人ぐらいが眼鏡っ娘となります。
　また、眼鏡っ娘比率については、正確な統計ではありませんが、エロゲ眼鏡っ娘リストによる「眼鏡っ娘が登場する」エロゲー中では、サブキャラまで含めて17.8%となっています。 ただし眼鏡っ娘が出ないゲームが約1/3程度あると考えられるので（だいたいの勘ですが）、それを勘案しますと11〜12%程度になると考えられます。 また、松茸氏が2001年1月の雑誌より統計したところによれば(*4)、男性誌における眼鏡っ娘率6.57％、女性誌における眼鏡っ娘率4.41%、合計5.56%であることが指摘されています。 上記平均から考えると、現実に比べてキャラクターにおける眼鏡っ娘の比率は少ないわけです。 なぜ少ないかについては作画上の問題と考えられますが、言及すると長くなるのでやめときます。

2.「眼鏡っ娘」の持つ属性とは？

　統計的には1〜2割にあたる眼鏡っ娘、本来眼鏡をかけていることによって性格がどうなるかなどということは統計的に考えにくいのですが、なぜかキャラクターにおける「眼鏡っ娘」にはある一定方向の「属性」が付与されていることが少なくありません。 というか、実際「萌え」である以上一定の傾向があります。

サンプリングの方法

　これについては、「エロゲー眼鏡っ娘リスト・収録及び統計の基準」をご覧下さい。

方向性の属性

○凌辱系とそうでないもの

凌辱系:56例
　ゲームの傾向として、所謂「凌辱系」と呼ばれるものが存在する。 主なものでは凌辱、痴漢、レイプ、監禁、拷問、重度の近親相姦等がそれにある。 表現しづらいが、これらの作品のキャラは、通常想像される「美少女キャラ」とは違う傾向を示す。 多いのは女医・女教師・看護婦・ニュースキャスター・キャリアウーマン・メイド・使用人・奴隷(!)・人妻・学生（主に同級生）・近親相姦モノでは義母・義姉妹（一応）などで、性格もタカビー（？）であるか極端に大人しいかの両極端の傾向を示すことが多い。 （主人公と）殆ど面識がないために性格に関する情報がないパターンも多い。
　中には通常の美少女系もいるが、これらの作品を、美少女系ジャンルのものと同一に扱ってよいものかは疑問の残るところ。 年齢・容姿的にも「っ娘」とは呼びにくいキャラが多い。

教養的属性

○成績優秀

優等生:13 天才:2 秀才:6 成績優秀:5 （重複有り）
　この、成績優秀であるというパラメータはわりと一般的に見られる傾向。 ただしその割に意外に数が少ないのは、敢えてそれが明示されていない、成績というパラメータがストーリーに関連しない、眼鏡っ娘以外のキャラクターがその属性を持っているなどの理由が挙げられる。

性格的属性

○真面目:33例（うち5例が3類）

　割と多いのがこの「真面目」という属性。生真面目になっているものも5例ある。 性格の明暗に関わらず真面目なパターン、暗いとかとっつきにくいという側面を含むパターン、メイドや看護婦などで従順という側面を含むパターンなどがある。 また、ある側面においては不真面目でも、別の側面では（あるひとつのことには）真面目というパターンも多い。

○やさしい:22例（うち2例が3類、1例が4類）

　どちらかいうと内向的な「やさしさ」つまり受け入れ型という側面を持つパターンが多い。 また、サポート型の「やさしさ」（「こみっくパーティー」の牧村南や看護婦など）などが多い他、理想型（成績優秀でしかも優しい）も1例ある。 （「家族奴隷化計画」の梢）。

○非接触型・受動型の性格

おとなしい:14例 控えめ:14例 おどおど:8例 内気:13例 受身:6例 無口・口数少:9例 対人関係が苦手:4例（重複あり） マゾ傾向:4例（付記からカウント）
　他人とあまり接触したがらない（上手ではない）、自分から何か起こそうとするのではなく起こったことに対処する（巻き込まれる）、など。 話すのがあまり得意でないパターンも多い。（→他人との接触を好まない性格）

○他人との接触を好まない性格

一人・孤独:5例？（付記からカウント）
　非接触型の中で、無口である、外面的性格的につんけんとしている、ともかく一人でいることが多いなど。 もともと孤児であるとか、環境的に孤独である、いじめられっ娘などの場合もある。 ただし「他人との接触を好まない」というのは複合的な性格であり、カウントが難しい。

○おっとり・ほえほえ型

おっとり:12例 ほえほえ:5例（ほえほえの5例中2例が3類、重複あり）
　「のろま」というのともちょっと違う、動作がゆるいというかなんというか。 その人の所だけ時間がゆっくり流れているような感覚と表現すべきか。 「のろま」と違う点は、それがステータスとして他人に認められる（許される）という点にある。 割と良い意味で他人を巻き込むことも多く、マスコット的な存在として扱われることもある。 （「トウィンクルレビュー」の鈴鳴マミコなど）

○おとぼけ

天然ボケ・おとぼけ:8例（付記からのカウント）
おっとり型と並んで語られることの多い性格。要領を得ないというか要領をつかみにくいというか、つかみ所がないというか。 普段からボケてるように見えるのになぜかしっかり仕事をしているパターン（「こみっくパーティー」の牧村南）や、とぼけた性格でミスも多いのになぜか人命に関わるミスはせず最新医療機器の操作もこなすパターン（「Vie -いつか夏の日」の迎留美子）などもある。

○ドジっ娘:8例

「ドジでのろまな〜」という使われ方もある(「裏稼業」の鷹取ひなた)が、「ドジだが一生懸命」という使われ方もする(2例)。 ただし、ドジという属性については、ドジっ娘系として別にいるパターンも多いと思われる。

○暗い、明るい

暗い・根暗:3例 明るい:5例（付記からカウント）
眼鏡というと暗いというイメージが付きまとうが、実は案外少ない。逆に明るいという設定の方が、カウントとしては多い。 ただし、無口であるとか他人との接触を好まないなど、非接触性の属性が「暗い」に先立って出ているからとも考えられる。

○冷静:12例（うち2例が3類）

「冷たい」という側面を持つことが多く、「冷血」という表現もある（2例）。 またクールとも言われる。「クールで知的」という点を強調するために使われる。 しかし冷たいということとは分けて考えられたり、表面的にはクールだが実は熱くなりやすいタイプ（「裏番組〜新人女子アナ欲情生中継〜」の相川砂織）や内弁慶である（「カラフルキッス〜１２コの胸キュン〜」の若葉）という例もある。

○一途

一途:14例（うち8例が3類）一生懸命:4例（付記からカウント）
一人の人間に尽くすタイプ、ひとつの物事に費やすタイプがある。 意外に少ないように思われるが、「主人公に対して一途」であるというのはストーリーが展開されてはじめて分かる要素なので、あまりカウントされてないのかも知れない。 そのほか、一生懸命が4例ある。（付記からカウント）

○裏性格:18例

これは、まずどういうものを「裏性格」とカウントするかという問題がある。 「眼鏡を外すと性格変わる」に代表されるが、それに限らず何らかの二面的な性格（性質）を持つもの。 主人公の前でのみ甘えたり内弁慶になったりするパターン、普段勝気な性格がとたんに弱くなるパターン、普段優しいが怒るととんでもなく怖いパターンが多い。 中には、実はロボットだったとか、変身してしまう（コスプレ含む）とか、酒乱だったりするパターンもある。 これについてはストーリー展開上明らかになっていくものも多いはずで、カウントできていないものも多いと思われる。

職業的属性

○女医・女教師:22例

職業イメージとして眼鏡をかけているという印象が強い。 また凌辱系のジャンルとして病院モノ、女教師モノというのは多いのか、22例中10例が凌辱系である。 年齢・容姿的にも、「っ娘」とは呼びにくいものも少なくない。
冷徹なパターン、生徒や患者から信頼されるパターン、わりとぶっちゃけた性格の3パターンにだいたい分かれる。

○メイド:12例

これについては、所謂「メイドもの」からのピックアップが多く、必ずしも眼鏡と連携した属性とはいえない。 「メイド系ジャンルの中の眼鏡メイドさん」という位置付けで考えた方が良いと思われる。
この例のように、あるジャンルモノの中で、さらに眼鏡っ娘であるという例は少なくない。

○看護婦:7例

これについても、「病院モノ」からのピックアップが多く必ずしも眼鏡と連携した属性とはいえない。 また、女医に眼鏡が多いことにも関連していると思われる。 というか、もっと多いと思ったが意外に少ない。

○委員長:5例（うち1例が4類）

　いいんちょ（「ToHeart」の保科智子）のイメージが強いが、カウントすると意外に少ない。 そもそも、エロゲーにおいてキャラが委員長であるという設定自体がそう多くない。

○巫女:4例

これも、巫女さんの一部が眼鏡かけてると考えた方がよさげ。

趣味・行動的属性

○読書系属性

読書家:10例 図書室:7例 図書委員:4例（図書委員は付記からカウント。ほとんど重複）
イメージの割には案外少ない読書系。 これは図書館や読書に関する設定が明示されることが少ないからだと考えられる。 読書家という設定に眼鏡っ娘が多いということは多分間違いないと思う。

○研究型属性

研究型:7例 研究室:6例（重複あり）
研究に没頭する人たち、一つのことに入れ込むタイプだが、それほど多いというわけではない。 研究室系のうち3例が科学部、2例が研究所ミステリーで、どちらかいうと職業やクラブに関連してのものが多い。

○オタク・マニア

オタク:4例 マニア:2例（いずれも付記からカウント）
現実におけるオタクのイメージ（現実のイメージはなぜか男だが）の割には、意外に少ない。 オタクやマニアという設定自体が、ヒロインとしてはあまり好まれないのが原因だと思われる。 オタク4例がアニメや漫画、マニアの2例は格闘技と錬金術。

容姿的特長

○髪型

ロング:133例(うち超ロング7例) セミロング:25例 ショート:49例
三つ編み:41例 おさげ:16例 ツインテール:8例 ポニーテール:4例 アンテナ:3例
　ロングが2/3、ショートが1/4残りセミロングといったところか。 これは、エロゲー全体の傾向としてロングが多いことが挙げられる。
　また、眼鏡+三つ編みというイメージが強いが、実はショートのほうが多い。 現実にはロングは少なく、最近は三つ編みはほとんどいない。 中には片天頂三つ編み、ツインテール三つ編みなどといった複雑な髪形をしている娘もいる。

○たれ目・つり目

たれ目:66例 つり目:16例
これは、どういうものをたれ目・つり目と定義するか、どのグラフィックを基準とするかによって変わるので難しい所。 （この統計で使われている定義では、キツ目とされる「ToHeart」の保科智子でもたれ目となる） 作家の絵柄的に必然的にたれ目つり目となるもの、設定上つり目たれ目にしているもの等様々である。 絵柄の人気から言うとたれ目系の方が好まれる傾向があることも、たれ目が多い一因であると思われる。 また、紹介ページでの小さい画像では判断しにくい。多分つり目だが判断しにくいという理由でカウントしなかったものも多い。

○胸（乳）

巨乳:67例（うち27例が3類） 普通乳:35例（うち10例が3類） 貧乳:22例（うち4例が3類）
巨乳に比べ普通乳が少ないが、これは「普通」とカウントするのが困難だからで実際はもっと多い筈。 また、巨乳が比較的多い（約3割）が、これは筆者自身ビバ巨乳だからということも否定できない。 ちなみにバストサイズプロフィールのある48例の平均値は約83cmであり、20代日本人女性の平均82cmとはほぼ一致するが、実在の日本人女性1000人以上を対象としたこの統計(*3)ではトップアンダー差が平均約10cm、カップサイズがAという（男としては）驚くべき結果になる。 ゲームの設定の場合は現実に比べウェストやアンダーバストサイズが細く、バストが平均値であってもCカップであるということがよくある。

○身長

身長高い:7例 身長普通:34例 身長低い:15例
身長に関しては、特に背が低いとか高いとかいう傾向を示さない。 身長プロフィールを持つ43例の平均が157cmであり、高校2年生の平均158cm(*3)、20代女性の平均159cmと大きく変わらない。 分布を見ても、平均値の158に対して±5cmを取った場合で30/49、158±7cmとした場合34/49となり、実はかなり平均値付近に集中していると言える。 低身長が14例あるが、このうち8人は境界線とした150cmである。また高身長が7例あるが、特定の傾向を示すとは言えない。 これは、身長が高いとか低いとかは、眼鏡属性とは別の属性となることが多いからだと思われる。

○眼鏡を外すと美人:5例

普段は眼鏡をかけた地味系だが、眼鏡を外すと実は美人だったという設定。 ただしこれもストーリーに関連して後のほうで語られる事が多い筈で、カウントされているものより多い可能性もある。 「眼鏡を外すと美人」というステレオタイプについてははいぼくの指摘するところである(*1)が、ここでは詳しくは言及しない。 ただ、眼鏡っ娘萌えというものが定着し、眼鏡を外すことを好まない層もあることから、減少傾向にあると推測する。

その他

○敢えて「普通」:2例

数は多くないが、わざわざ「性格は普通」と書かれたものが2例ある。 所謂エロゲーの性格設定においては、「普通」であることのほうが珍しいということであろうか。

○病弱・虚弱

これらの設定は案外少なく3例しかない。入院している例はとうとう見当たらず。 これは、病弱という設定が、病弱系として切り離されたからではないかと思われる。

○運動が苦手

敢えてそれを明示した例はなく（示唆した例はある）、逆に運動が得意という例が4例あった。 潜在的に運動が苦手な眼鏡っ娘は多いと思うのだが、ストーリー上関係ないために殆ど使われることがないのだと考えられる。

　おおよそこんな所でしょうか。 これらの要素のうちいくつかがピックアップされることにより、その眼鏡っ娘の全体的な傾向というものが表れるのだといえます。 ちなみにこれはエロゲー・ギャルゲーからサンプリングした傾向ですが、漫画やアニメ等における傾向もあまり大きくは変わらないと思います。

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